社交不安障害とは
社交不安は社会恐怖という呼び方もされます。また日本では対人恐怖という呼び名で、より広い病気の捉え方が以前されていました。
社交不安障害とは、人前でのスピーチや食事、はじめての人との交流などいわゆる他人との「社交」「社会」的場面にあたって、自分の外見や能力を笑われる/低く評価されるのではないかという不安・緊張が高まってしまう病気です。汗をかいて震えてしまったりして本来の行動がとれなくなります。その結果、それらの苦手な場面への恐怖心と場面を避けようとする行動が一層強まっていきます。この病気は決して内気な性格というものではありません。多くの人がこの社交不安に苦しんでいますが、自分の性格だと考えてしまったり、また専門家に相談するという場面にも不安緊張があるためなかなか受診に結びつきません。興味深いことに疫学調査では国によって有病率にとても違いがあり、日本は0.7%で米国・欧州では7%前後と10倍も差があります。おそらく人と交流する場面でどのていど外向的な態度や積極性が理想とされているか、という文化的な違いによるものと思われます。
社交不安障害の見分け方と治療
社交不安障害と見分けるべき病態として、「回避性パーソナリティ障害」はかなり似ていますが社交不安障害より幅広い社会的関わりを不安から回避してしまう (進路や生活環境の選択などを含めて)ものです。また「発達障害(自閉症スペクトラム障害)」では不安や緊張のためというより生来的な特性として他人と円滑なコミュニケーションがうまくとれずに悩みます。他に「統合失調症」も他人との交流を避け孤立しやすい傾向がありますが、多くは陰性症状によって関わりが億劫になるためと考えられます。最後に、自分の外見がひどく醜いという妄想的な確信を抱いて他人との関わりを避けてしまう「醜形恐怖」は、日本では社交不安より広い概念である「対人恐怖」の重症だとして論じられましたが、社交不安に似るところはありますが症状の質も治療も異なる病態だと現在は考えられています (これは強迫性障害の項でも触れます)。
社交不安障害の治療では、抗うつ薬(SSRI)、認知行動療法の有効性が認められています。