適応障害とは明らかなストレスへの心理的反応として色々な症状が出て生活に支障をきたすような病状を指します。学術的にはスポットライトを浴びることが少ないのですが、外来に来られる方では最も多く見られる病態です。
適応障害の症状
症状は気分の落ち込み、不安、イライラなどの情動面の症状のほか、動悸・食欲不振・不眠などの自律神経症状もよくみられます。うつ病や不安障害との違いはどこかといえば、第一に明らかな「原因(ストレス因)」があることです。うつ病も失敗や喪失体験からしばしば始まりますが、その出来事はあくまで「きっかけ」であってうつ病の症状はストレス因への反応としては通常理解できない程度・期間になるのが典型的です。第二に適応障害では抑うつや不安の程度がうつ病や不安障害など他の診断を満たすほど強くないことにあります。ここで症状の“程度”は診断ガイドラインでは症状数で評価されますが、古典的には症状の質が鑑別に重要です。
適応障害の診断
適応障害の診断において、うつ病や不安障害より見極めに注意を要するのはパーソナリティの問題(障害)です。ストレスは暮らしの中にあまねく存在しますが、皆に同じ反応・症状が引き起こされるわけではありません。多くの方に耐えられるものでも元来情緒が不安定でストレスに弱い方には耐え難いものとなります。またその人のヒト・モノへの捉え方のパターンに応じてストレスにより落ち込みや不安ではなく他者に被害的・攻撃的になることがあります。
外部から与えられるストレスの質と量に対して受け止め手の人の性質が必ず存在します。ストレスの内容に対して出てきた症状の内容や強さに偏りがある、また以前からの情緒や対人関係について長年の問題がある場合はパーソナリティの困難さが背景にあることを考えなくてはなりません。適応障害の治療で難しいのはこの点にあり、いつも外から来るストレスを減らすよう他人に要請すればよいというものではなく、受け止め手のストレス対処法を考えていくことがより大切な場合があります。
もう一つの問題
もう一つ適応障害で問題となるのは、強く短いストレス因・出来事への反応よりも、慢性的状況(例えば事故で後遺症を生じた、治癒の難しい病気になった、長期間従事した仕事を失った等)への反応の場合です。人間は多くの状況変化に慣れ「適応」していくことができるはずですが、新しい状況を受け入れて新しい暮らしを作れない硬直性があると症状も長期化してしまうこととなります。